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相続税に関する疑問に答えます

Q1:相続が発生したとき、誰に相談すればいいの?

Answer:まず税理士に相談してみましょう。最初1回目の相談は無料で受けてくれる税理士が多いので、相続税の申告が必要かどうかを確認しましょう。

相続が発生した場合、通常以下の手順で行います。
①相続財産を法定相続人のあいだでどのように分けるか相談します。
②(必要なら)相続税の申告をして納税します。
③不動産等の相続財産があった場合は、名義変更のため登記します。

税理士に頼むこと

相続が発生したら、相続税が発生するか、相続税の申告が必要かを税理士に相談してみましょう。

相続税が発生することと、相続税の申告が必要なことは同義ではありません。一部の特例を使用する場合は、納税額がなくても期限内に申告することが要件となっています。

どちらも必要ないことが分かれば、不動産の登記、その他財産の名義変更等を行います。

相続発生時における税理士の本来の役割は相続税申告書を作成することです。

そのため、相続人間で相続財産をどのように分けるかを相談して、税理士に申告を依頼するというのが理論的な流れになります。

しかし、誰がどの財産を相続するかによって、納めるべき相続税の金額が異なってきます。

決める前に税理士に相談した方がよい(得)ということです。

例えば、被相続人が住んでいた自宅について、小規模宅地等の特例を受けられる相続人には条件があります。

決めかねている場合にも税理士が相談にのってくれます。

また、兄弟姉妹間で意見が一致しない場合も、税理士等の専門家に間に入ってもらうことによってスムーズに相続できる場合もあります。

誰が何を相続するかが決まれば、遺産分割協議書は税理士が作成してくれます。税理士が使っている相続税申告用のアプリから自動で作成できるので、特に手間はかかりません。

遺産分割協議書は相続した不動産を登記する際などに必要になります。

相続税の計算及び申告をする際に、不動産の登記簿謄本、戸籍謄本等が必要になった場合は、税理士が代理で取得することもできます。

相続財産の分割及び相続税額が確定した頃に、遺産分割協議書に相続人全員が署名、押印(実印)します。

納税額が発生した場合は、相続人がそれぞれの相続税を納付することになります。通常は納付書を銀行の窓口に持っていって支払います。

司法書士に頼むこと

相続税の申告・納付の終了後、相続で取得した不動産があった場合は当該不動産の登記手続きを行います。

司法書士さんに依頼する方が多いですが、自分で手続きを行うこともできます。

相続税の申告・納付は税務署、不動産登記は法務局が管轄官庁です。

相続税申告書の作成に比べると、不動産登記は面倒ですが自分でやることも可能です。

自分でやる場合は司法書士さんへの報酬はかかりませんが、登記のための印紙税は必要です。

不動産登記費用の大部分は印紙税なので、時間が十分ある、面白そうだからやってみたいという方以外は司法書士さんにお願いする方が簡単です。

特に司法書士さんに心当たりがない場合は、税理士さんが紹介してくれることも多いです。

不動産業者に頼むこと

相続した不動産を売却する場合は、不動産業者さんに頼みます。

その場合の留意点としては、例えば小規模宅地等の特例を使って相続税申告をした不動産であった場合は、「相続開始時から相続税の申告期限まで有していること」等の要件を満たしていることを確認する必要があります。

この要件を満たせずに、相続開始後10ヶ月以内に売却してしまうと、小規模宅地等の特例が使えなくなってしまいます。

また、相続した不動産を売却した際には、売却した相続人はその年の所得税の申告・納付が必要となります。

譲渡所得を申告する際に、相続税の申告期限の翌日以後3年以内に売却した場合、支払った相続税の一部を不動産の取得費として加算することができます。

どのような不動産業者さんに依頼するのかが大事ですが、それはケースバイケースです。

例えば、マンション、アパート一棟、市場性が高いと思われる地域の戸建て等の場合は、比較的手広く仲介してくれる業者さんに頼むとよいでしょう。

相続税を多く手掛けている税理士さんの場合、不動産業者さんを紹介してくれることもあります。

弁護士に頼むこと

相続が発生して、弁護士さんに依頼するケースはトラブルがあるもしくはトラブルが発生しそうなケースですので、あまり多くはないと思われます。

考えられるのは、相続財産の分割で揉めてまとまらない場合、思わぬ法定相続人が現れた場合、相続財産に法的な問題がある場合、遺言書の内容に納得できない場合、などです。

Q2:遺産分割協議書には何を書けばいいの?

Answer:遺産分割協議書は、相続人の誰が、どの遺産をどれだけ相続するかを決めた内容を記載する書類です。そのため、有効な遺言書があり、それに基づいて相続する場合は、遺産分割協議書を作成する必要がありません。また、受取人が指定されている保険金は相続人同士で協議する必要がありませんから、遺産分割協議書に記載する必然性がありません。

遺産分割協議書の作成が(全く)必要ないケース

遺産分割協議書を作成する必要が全くない場合があります。

法定相続人が1人の場合、例えば、お父様が既になくなっており、お母様が亡くなり、子供が1人の場合は、法定相続人は1人なので、遺産分割する必要がありません。したがって、遺産分割協議書も不要になります。

有効な遺言書があり、それに基づいて相続する場合は、遺産分割が遺言書によって決まっているわけですから、改めて遺産分割協議書を作成する必要はありません。

遺産分割協議書は必要な場面が限られます。例えば、相続財産が現金と預貯金のみの場合は、作成する必要はありません。

被相続人の銀行預金は、銀行所定の手続きを取ることによって、当該預金を解約し、代表者の口座に振り込んでもらうことができます。その場合、遺産分割協議書は必要ありません。

遺産分割協議書の作成が必要ない財産

例えば被相続人である母親が相続人である娘を受取人として死亡保険をかけていた場合、母親の死亡により娘が受け取った保険金は相続財産ではありませんので、遺産分割協議書に記載する必要はありません。

相続税の計算上はみなし相続財産として課税対象になります。

例えば被相続人である父親が友人に1,000万円貸していた場合、これは金銭の支払請求権ということになり、原則法定相続分で分割されます。

そのため、遺産分割協議書に記載する必要はありませんが、相続人の合意があれば、遺産分割の対象として遺産分割協議書に書くことができます。

逆に、被相続人が死亡する以前に負っていた借金(金銭債務)は、原則として法定相続分によって分割承継されます。したがって、遺産分割の対象外となります。

墓地、墓石、位牌、仏壇などは、祭祀に関わる財産であり遺産分割協議の対象外になります。また相続税についても課税対象外となります。

遺産分割協議書の作成が必要なケース

相続財産の中に不動産、上場会社の株式・投資信託等が含まれている場合、名義変更を行うために遺産分割協議書が必要になります。

遺産分割協議書はすべてを1つの遺産分割協議書に含める必要はありません。例えば、不動産登記のために不動産の分割内容のみを記載した遺産分割協議書を作成することがあります。

相続税の申告の際に、例えば小規模宅地等の特例を使う場合等は、遺産分割協議書の作成が必要になります。

これは小規模宅地等の特例は、遺産分割協議が完了していることを前提として適用できる制度なので、それを裏付けるものとして、遺産分割協議書(もしくは遺言書)の添付が求められているわけです。

相続人が2人以上の場合、もし法定相続分で相続財産を分割する場合は遺産分割協議書の作成は必要ありませんが、法定相続分の分割でなければ、遺産分割協議書が必要です。

例えば、相続人が子供2人だった場合、各々1/2が法定相続分となりますが、完全に法定相続分で分割することは容易でないこともあります。まして、相続人がもっと多い場合は更に難しくなります。

後からトラブルになることを避ける、不動産の名義を共有にしない、といったためにも、遺産分割協議書を作成しておいた方が面倒な事態を避けることが可能です。

Q3:青空駐車場はなぜ更地評価になるの?

Answer:青空駐車場は貸地ではなく自用地で、事業用宅地としての条件を満たしていないので更地の自用地として評価します。

自用地か貸地かという論点

貸駐車場を所有していた場合、相続税法上は土地を貸していたという捉え方ではなく、自分の土地に(他人の)自動車を保管することを引き受けているという認識になります。

駐車場の利用権は、土地自体には及ばないと考えられています。

そのため貸地の評価ではなく、自用地として評価することになります。

ご存じの方も多いと思いますが、自用地というのは例えば自分の家が建っていて、自分で使っている土地のことです。

これに対して、人に貸している宅地は貸宅地、賃貸用アパート・賃貸マンションを人に貸している場合は、貸家建付地といいます。

駐車場の場合は貸宅地ではないと認識します。

人に貸している宅地である貸宅地の場合はどう評価するかというと、1つの土地を借りている人の権利と貸している人の権利に分かれます。

例えば借地権割合が60%の土地は、
①借りている人の権利=土地の評価額✕60%、
②貸している人の権利=土地の評価額✕(1-60%)となります。

ただし、例えばコインパーキングの事業者に土地を貸して、事業者が駐車場の施設を土地の上に作っているような場合は、賃借権が生じていると考えて、自用地として評価額から賃借権の価額を控除した額となります。

具体的な評価方法は、国税庁のタックスアンサーに記載がありますので参照して下さい。

No.4627 貸駐車場として利用している土地の評価

小規模宅地等の特例適用という論点

小規模宅地等の特例という言葉は聞いたことがあるという方も多いと思います。

この特例が適用されるのは以下の4つのパターンになります。

①特定居住用宅地等:被相続人の自宅が建っていた土地、
②特定事業用宅地等:被相続人が事業用に使っていた土地(例えば、飲食店を営んでいた土地など)、
③特定同族会社事業用宅地等:同族会社の事業用に使っていた土地、
④貸付事業用宅地等:賃貸事業に使っていた土地(例えば、賃貸マンションを建てて貸していた土地など)

駐車場は、駐車場の敷地上にアスファルトや砂利もしくは機械式の設備等の構築物がある場合は上記④貸付事業用宅地等となり、小規模宅地等の特例を適用して50%の減額をすることができます。

しかし、小規模宅地等の特例が適用できるのは、土地の上に建物や構造物がある場合に限られるので、構築物がない青空駐車場には小規模宅地等の特例を使うことができません。

考え方としては、土地の上に構築物がなければすぐに売却したり、転用してマンションを建てることも可能です。そのため資本を投下しておらず事業性がないと判断されます。

Q4:買い手がつかないような老朽化したマンションの相続税はなぜゼロにできないの?

Answer:相続税法では財産の評価は、時価主義を基本原則としていますが、課税実務上は、「財産評価基本通達」に基づいて評価します。したがって、マンションの建物については固定資産税評価額で、マンションの敷地については路線価方式又は倍率方式によって評価するため、買い手がつくか否かに関わらず、相続税評価額はゼロにはなりません。

マンションの評価方法

マンションの相続税評価額=建物の評価額+土地部分の評価額 となります。

建物の評価額は固定資産税評価額となります。固定資産税評価額は毎年、地方自治体から送られてくる固定資産税の納税通知書に記載されています。評価替え等がありますので、必ず該当年度のものを参照してください。

なお、課税明細書を紛失すると再発行は受け付けられないので、地方自治体の税事務所(例:都税事務所)において、課税明細書の内容が記載された名寄帳の写しを有料で交付してもらえます。

土地の評価は  
マンション全体の敷地の評価額 × 敷地権割合 で計算できます。

敷地権割合とは、登記簿謄本に記載された「敷地権の割合」を登記簿謄本に記載された土地全体の「地積」で割ったものです。

マンション全体の敷地の評価額は、前述のように路線価方式又は倍率方式を用いて計算します。

不動産鑑定で評価

前述のように、相続税法では財産の評価は、時価主義が原則ですが、国税庁は評価の画一性・迅速性・簡便性を図るため、財産評価基本通達によって評価したものが時価であるとしています。

したがって、上記《マンションの評価方法》で述べたように、建物については固定資産税評価額で、土地については路線価または倍率方式で評価したものが時価となります。

しかし、評価額がいわゆる時価を大きく上回っている場合はどうでしょうか?

例えば老朽化してほとんど価値がなく、不動産市場で売却するのが困難なマンションが相続税評価額では3,000万円の価値がある、と計算され、なかなか納得できないこともあるかと思います。

その場合、不動産鑑定評価を依頼することも1つのチャレンジです。

あえてチャレンジと書きましたが、それは税務当局から否認されるリスクがあるという意味です。

上記のように、国税サイドは財産評価基本通達を使って算定するのを原則と考えています。

不動産鑑定評価における評価額が正しい時価である、と主張するためには税務当局を納得させる必要があります。

マンションの老朽化に伴い、管理組合において建て替え検討中であったマンションの1室について、財産評価基本通達に基づいた評価額は7,206万円、不動産鑑定評価による価額は2,300万円であった事例において、納税者は不動産鑑定評価による価額を時価と主張していました。

しかし、東京地裁で国税勝訴の判決が出たというケースもあります。
(詳しい内容をご覧になりたい方は下記のページをご参照ください)↓

立替検討中のマンションの評価

不動産鑑定書を取るには数十万円の費用がかかり、また上記のように税務当局から否認されるリスクもあります。否認された場合は追徴課税があります。

一概に、不動産鑑定による評価にはリスクがあるというわけではありませんが、その評価がみとめられるのは「特段の事情がある」*場合に限られます。

「特段の事情がある」については、精通した専門家に判断を委ねる方が安全かと思われます。

*「特段の事情」とは
財産評価基本通達
(この通達の定めにより難い場合の評価)
6 この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。

Q5:相続した後に所得税を払う必要はあるの?

Answer:相続財産については相続税を支払いますので、相続財産について所得税は発生しません。しかし、一部の保険金等について所得税を支払うケースがあります。

死亡保険金について

例えば相続人である娘が、被相続人(亡くなった方)である母親を被保険者として死亡保険をかけて保険料を支払っていた場合、母親の死亡により娘が受け取った保険金には相続税ではなく、所得税がかかります。

死亡保険金を一括で受け取った場合は、保険金から保険料等を差し引いた額が一時所得になります。

相続財産である不動産等を売却した場合

例えば相続人である息子が、被相続人である父親の住んでいた自宅を売却した場合は、譲渡所得となり所得税が課税されます。

譲渡所得は、譲渡金額から取得価額と譲渡費用等を差し引いた金額になります。

この不動産は息子が相続によって取得したものですが、父親が不動産を購入した際の金額が取得価額となります。

アパート・マンション等の収益物件を相続した場合

例えば法定相続人は娘と息子の2人で、相続財産のうちに被相続人である母親が所有していた賃貸用アパート一棟あった場合、相続が確定するまでの間のアパートの家賃は法定相続分で按分して各々の所得となり、所得税が課税されます。

被相続人の年金

例えば被相続人である父親が2月10日に亡くなり、2月15日に父親の厚生年金が支給された場合、2月に支給される年金は12月及び1月分ですから、その時期には父親は存命であり当該年金は受け取る権利があります。

しかし、支給日には既に亡くなっているため、当該年金は例えば相続人である娘が受け取ることになります。

分かり難いですが、この年金は相続財産ではありませんので、相続税の申告には含まず、受け取った娘の所得になり、所得税が課税されます。